メールよりも気軽にやり取りでき、複数人での会話も容易なビジネスチャット。
最近は、社内外でのコミュニケーションや連絡手段のツールとして利用する企業も増えています。
一方で、簡単につながってしまうことによる「チャット疲れ」や、利用ルールのあいまいさによる「マナーへの不安」などを感じている人も多いのではないでしょうか。
実際、当メディアで仕事でチャットを利用している10~60代の男女221人にアンケートを行ったところ、「ビジネスチャットをするうえで悩みがある」と回答した人は49.8%の結果に。
ビジネスチャットを利用している約半数の人が悩んでいることがわかります。
伊藤 陽介
当記事では、上記以外のビジネスチャットの具体的な悩みと工夫していることについての調査結果を回答数の多い順にランキング形式で掲載しています。
アンケート結果には、株式会社ビズヒッツ代表の伊藤の考察コメントもあわせて紹介しています。
ビジネスチャットの使い方やルール作りに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 調査対象:仕事でチャットを利用している全国の男女
- 調査期間:2020年11月10日~17日
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 調査人数:221人(女性119人/男性98人/未回答4人)
ビジネスチャットの悩みランキング
ビジネスチャットをするうえで「悩みがある」と回答した110人に、具体的にどんな悩みがあるのか質問しました。
回答数の多い順にランキング形式で紹介しています。
ランキング上位は1位「会話のテンポが合わない(27人)」、2位「言いたいことが伝わりにくい(24人)」、3位「言葉づかいに悩む(11人)」の結果に。
続けて、4位「やりとりが多く管理しづらい(10人)」、同率4位「即レスへのプレッシャー(10人)」、5位「誤送信がある(9人)」と続きます。
ビジネスチャット上のコミュニケーションがやりづらいことに悩んでいる人が多いとわかります。
各ランキングの具体的な理由をアンケートのコメントとともに紹介していきます。
1位 会話のテンポが合わない
- 複数人でチャットする際、自分と相手の既読や書き込みのタイミングに時差が生じて用件が混在する(30代 男性 受付)
- 文字を打っている間に相手がどんどん打ち込んできて、会話にならないことがある。(50代 男性 システムエンジニア)
- 相手が文章を考えているのか、こちらの反応を待っているのかがわからない(20代 女性 カウンセラー)
ビジネスチャットの悩み1位は、「会話のテンポが合わない」でした。
「会話のスピードについていけない」という意見や、反対に「相手の反応が遅くてもどかしい」というコメントが多く寄せられました。
会話がテンポよく進まない原因としては、
- タイピングスピードが遅い
- 通信や既読表示にタイムラグが生じる
- 文章がわかりにくく、理解するのに時間がかかる
- 即答できない内容や質問
- チャットに集中できない場所にいる(外出先など)
といったことが考えられます。
「相手の反応が遅いときは返答を待ってから入力する」「タイピングスピードを上げる」など、互いにペースを合わせる努力をすることも必要かもしれませんね。
2位 言いたいことが伝わりにくい
- うまく伝わらなくて何回もやりとりをし、予想以上に時間を費やすことがある(40代 女性 コンサルティング会社)
- 文を書くのが苦手なので、簡潔に用件を伝えるのが難しい(20代 女性 事務職)
- 自分の伝えたい内容が正しく伝わらないケースがある(30代 男性 臨床工学技士)
ビジネスチャットの悩み2位は、「言いたいことが伝わりにくい」でした。
メールと違い、チャットは短い文章でのやりとりが基本。
そのため、伝えるべきことを簡潔にわかりやすくまとめることに苦労している人が多いようです。
文面を考えるのに時間がかかったり、言いたいことがうまく伝わらず、何往復もやりとりしてしまうとの声も。
なかには、簡単な連絡事項はチャット、込み入った話は電話と使い分けている人もいました。
3位 言葉づかいに悩む
- どのくらいまでかしこまった文章にすればいいか、いつも悩む(30代 女性 WEBライター)
- ビジネスライクな上司とのチャットでは「あれ?もしかして怒ってる?」と心配になってしまう(30代 女性 学習塾の事務員)
- チャットは用件だけでいいと聞くが、どうしても前置きや後付けの言葉を入れてしまう(30代 男性 人材育成担当)
ビジネスチャットの悩み3位は、「言葉づかいに悩む」でした。
チャットは、メールよりフランクにやりとりできるのがメリット。
「お忙しいところ恐れ入りますが…」「もしご都合がよろしければ…」のようなまわりくどい言い回しも基本的には不要です。
しかし、明確なルールやマナーがあるわけではないので、「砕けすぎると失礼かも」「ほんとに挨拶抜きでも大丈夫?」と悩んでしまう人も。
また、簡潔な文章は冷たい印象を持たれがちなので、キツイ言い方になっていないか気になってしまう人も多いようです。
正解がわからないまま、探り探り利用している人も多いことが伺えます。
4位 やりとりが多く管理しづらい
- 一つのチャットに大勢の社員が参加している場合、重要会話のチャットが埋まりやすい(20代 男性 エンジニア)
- 数人でチャットをすると、どの文に対しての答えなのか混乱するときがある(40代 女性 貿易事務)
- 過去のやり取りの内容を思い出せない時に検索をかけてもなかなかヒットせず、やり取りの内容が分からないままのときがある(40代 男性 ソフトウエア開発)
ビジネスチャットの悩み4位は、「やりとりが多く管理しづらい」でした。
大勢でチャットをしているとき、会話がどんどん上に流れて重要な情報が埋まってしまった経験のある人も多いと思います。
その結果、「話の結論がわからない」「依頼された仕事を見落とす」といった問題も起こるようです。
メッセージが多くなった場合は、「確認ですが、私は○○を行えばいいですね」「○○さんは△△までに□□をしてください」のように、チャットの最後で決定事項を再確認するとよいでしょう。
また話題が混在してわかりにくいときは、「○○については○○ということで良いですか?」のように、都度内容を確認しましょう。
同4位 即レスへのプレッシャー
- 既読機能があるので「すぐに返信しなくては」と焦る(30代 男性 事務員)
- メールよりも気軽に確認・返信できることから、早い返信を求められる(30代 女性 人事)
- いつでもすぐに返信を求められているような気がする。私は業務時間外にチャットを見ないので、相手との間隔の調整が難しい(40代 女性 経営コンサルタント)
ビジネスチャットの悩み同率4位は、「即レスへのプレッシャー」でした。
メールの場合、「1日2~3回チェックし、余裕のあるときに返信する」といった使い方をしている人も多いと思います。
メールを送る側としても、5分後の返信を期待している人は少ないのではないでしょうか。
一方ビジネスチャットは、「なるはや」の返信を期待する傾向にあります。
実際に、なかなか返信がこないために業務が滞り、イライラした経験がある人も多いでしょう。
チャットは手軽にやりとりできるぶん、送る側も受け取る側も「即レス」を意識してしまうようです。
5位 誤送信がある
- エンターキーで送信されてしまう機能により、慣れていないと誤送信、途中送信してしまう(20代 女性 一般事務)
- 文章作成中の意図しないところで送ってしまうことがある(20代 女性 コンサルタント)
- 急いで入力しようとするため、誤字脱字が発生しやすい(50代 男性 外資系経理)
ビジネスチャットの悩み5位は、「誤送信がある」でした。
入力の途中に誤って送信してしまった、という経験談が多く寄せられました。
チャットツールによっては、『エンターキー=送信』となっているため、改行するつもりが送信してしまうというミスが起こりやすいようです。
また、会話に遅れないように焦ってタイピングすることで、誤字脱字や変換ミスも発生しがちなようです。
1位「会話のテンポが合わない」、2位「言いたいことが伝わりにくい」、3位「言葉づかいに悩む」と続いていることから、ビジネスチャットならではのコミュニケーションの取りづらさがわかる結果となっています。
電話やビジネスメールでやり取りする場合は、社会全体として一般的な定型文が普及している中、ビジネスチャットには、まだ決まったルールがありません。
たとえば、「お世話になっております」と挨拶文を入れる方もいれば、要件だけしか伝えない方もいます。
社内に関しては、社内ルールを決めることで使い方の統一をおすすめします。
文章終わりに「それではよろしくお願い致します」の一文を入れたほうが良いのかと迷うこともなくなるでしょう。
ただ、外部企業に関しては、それぞれでルールが異なるので、最初に送信する側なのであれば丁寧に送って、その後のやり取りを行う中で先方の書き方に合わせていくのが無難ではないでしょうか。
ビジネスチャットの使い方で工夫していることランキング
仕事でチャットを利用している221人に、「ビジネスチャットで工夫している使い方」を聞いたところ、以下の結果となりました。
回答数の多い順にランキング形式で紹介しています。
ランキングのダントツ1位は「簡潔でわかりやすい文章にする(91人)」。
次いで2位「言葉づかいを工夫する(52人)」、3位「即レスする(41人)」、4位「誤送信に気をつける(13人)」、5位「緊急度合いを相手に伝える(11人)」、同率5位「早く打てる工夫をする(11人)」の結果となりました。
全体的に相手に対する気遣いを考えての工夫や使い方が多いとわかります。
各ランキングの結果とあわせて、具体的な回答を紹介していきます。
1位 簡潔でわかりやすい文章にする
- 相手がパッと見て用件を把握できるよう、文章を極限までシンプルにしている(30代 男性 人材派遣の営業)
- 何をどうしたいのか、明確な文章を送るようにしている(20代 女性 ITコンサルタント)
- 質問には「YES/NO」で答えられるように、わかりやすくまとめている(20代 男性 ネット広告運用)
円滑にビジネスチャットをするために工夫していること1位は「簡潔でわかりやすい文章にする」でした。
瞬時に理解できる文章になるよう、また相手が返信しやすい文章になるよう工夫している人が多数。
具体的には、
- できる限り短い文章にする
- 結論から書く
- わかりやすい表現を使う
- 数字・日時などを具体的に入れる
といった点が挙げられました。
わかりにくい文章は誤解を招くだけでなく、追加の説明や質問が増えることで、やり取りの手間が増える原因にもなります。
簡潔でわかりやすい文章にすることで、相手も自分も負担がなくなり、テンポのよい会話ができるようになりそうですね。
2位 言葉づかいを工夫する
- きつい言い回しになっていないか、よく確認している(20代 女性 一般事務)
- 柔らかい書き方を心がけ、ネガティブなことを伝える際は、先に日々の貢献に感謝するような文言も入れている(30代 女性 外資系企業)
- 相手のカジュアル度合い(言葉遣い)に合わせている(30代 女性 人事)
円滑にビジネスチャットをするために工夫していること2位は「言葉づかいを工夫する」でした。
チャットの言葉づかいには迷っている人も多いものの、基本的には丁寧な言葉を使う人が大半。
そのうえで、相手が「!」などの記号や絵文字を使ったら自分も使うなど、相手のテンションに合わせているとのコメントが多く寄せられました。
また、できるだけやわらかい印象を与えるよう、言葉選びや言い回しに気をつけているとの声も。
ここでもやはり、受け取る側の立場に立って考えている人が多いことがわかります。
とはいえ「チャット=雑談・会話」なので、あまり難しく考えず、上司と直接話すようなイメージで文章を紡ぐのが自然かもしれませんね。
3位 即レスする
- なるべく早めに目を通し、返事をする(20代 女性 マーケティング)
- すぐに答えられない場合も必ず一言、時間がかかることを伝える(20代 女性 WEBメディア)
- パソコンだけでなくスマホにも通知がくるよう設定して、見落としがないようにしている(20代 男性 広告代理店の営業職)
円滑にビジネスチャットをするために工夫していること3位は「即レスする」でした。
チャットが届いたら、できるだけすぐに返信しているとの声が多数寄せられました。
返信に時間がかかる場合は、顔文字や「いいね!」で先にリアクションだけしたり、「後から返信する」と伝えておく人も。
また、通知をオンにしてメッセージを見逃さないようにしているとの声も多くありました。
相手を待たせないよう努力する一方で、常にチャットを意識し、チャットに振り回されている人も多いことが推測できます。
4位 誤送信に気をつける
- 別の場所に打ち込み、確認してからコピー&ペーストで送信する(30代 女性 貿易関係)
- 入力後すぐに送信を押さずに、内容を確認してから送信する(30代 男性 システムエンジニア)
円滑にビジネスチャットをするために工夫していること4位は「誤送信に気をつける」でした。
誤送信を防ぐ対策として、一旦メモなどほかの場所で文章を作成し、コピペして送信するという人が多くいました。
文章が長くなる場合や、用件が複雑な際に有効な方法ですね。
また、テンポよく進んでいるチャットであっても、入力した文は一度読み返してから送信しているとのコメントもありました。
チャットあるあるの「エンターキーで改行するつもりが送信してしまった」というミスも、入力した後にひと呼吸置くことで防げるようです。
5位 緊急度合いを相手に伝える
- いつまで返信がほしいかを明記する(30代 男性 営業)
- 返信を急がない場合は、その旨を記入している(30代 男性 事務職)
- 業務連絡のみの場合、「返信不要」と書き加えることで読んだ相手に配慮している(40代 女性 飲食業)
円滑にビジネスチャットをするために工夫していること5位は「緊急度合いを相手に伝える」でした。
- 急いでいるのに返信がこなくてイライラする
- チャットが来るとすぐに返信しなければ…と焦ってしまう
といった体験をしている人も多いことから、相手に送るときは、急いでいるのかいないのかを明記するといった声がありました。
「○月○日○時までにご回答ください」などと書くことで、返信の締め切りがわかりますし、万が一返信がない場合にも、期限を設定していることで催促しやすくなります。
逆に急がない用件であれば、「お時間のあるときにご確認ください」などと記載しておけば、無駄に焦らせてしまうこともありませんね。
同率5位 早く打てる工夫をする
- よく使う言葉、単語は保存してすぐにレスができるようにしている(40代 女性 医療職)
- ちょっとした問い合わせにはコピペで答えられるよう、汎用分を用意した(20代 男性 市役所勤務)
- ブラインドタッチができるように練習している(50代 男性 薬剤師)
円滑にビジネスチャットをするために工夫していること同率5位は「早く打てる工夫をする」でした。
タイピングが遅いことで会話についていけない状況を避けるために、ブラインドタッチを練習しているというコメントも多くありました。
また、文字入力の時間を短縮するために、よく使う定型文や単語を登録している人もいました。
その他の意見を紹介
- 先方の営業時間外に連絡しないようにしている(20代 女性 営業事務)
- ○時以降は、返信は朝にすると伝えている(30代 男性 教育関係)
- 前も書いたことでもくりかえし何度も書いて、齟齬が生まれないようにしている(30代 女性 プログラマー)
- もしかして通じてないかな?と少しでも感じたら、明確な言葉であとからでも付け足す(40代 女性 WEBライター)
チャットを送る時間に配慮したり、話に食い違いが生じないように工夫したりしている人が多くいました。
1位「簡潔でわかりやすい文章にする」が221人中91人と圧倒的に多くなっていますが、実際おすすめといえるでしょう。
ビジネスチャットはスマホアプリでやり取りすることも多く、長文になるほど返信しづらくなります。
「後ほど事務所のパソコンから返信しよう」と、後回しになったまま返信忘れしてしまうケースも少なくありません。
あと主観となってしまいますが、外部の方たちとやり取りしている中で、実績が大きい方ほど、チャットの返信は端的だと感じています。
それこそ「一文節」だけでの返信も多いですが、短い文章であったとしても、相手に対しての感謝の気持ちや気遣いを感じさせてくれる文章となっていますね。
具体的には、ビックリマーク、顔文字、スタンプなどを上手く織り交ぜることで、上手く感情表現を演出しています。
たとえば、「ありがとう。」と「ありがとう!」と1文字違うだけでも相手に与える印象が大きく変わるのではないでしょうか。
まとめ
ビジネスチャットでは、
- 会話のテンポが合わない
- 言いたいことが伝わりにくい
といった悩みを抱える人が多い一方で、その悩みを解決するために「文章の書き方」や「送るタイミング」を工夫している方が多くいることもわかりました。
また、「やり取りが増えると管理しづらくなる」「エンターにより誤送信してしまう」といった悩みも、チャットツールによってはすでに解決済みですし、他のツールでも改良によりすぐに問題にならなくなるでしょう。
ビジネスチャットは使いこなせばとても便利で、仕事の効率化やコミュニケーションの円滑化にも大きく役立ちます。
問題点を解消しながら、ぜひ積極的に活用してみてください。
もし、まだ社内でビジネスチャットの使用ルールを作っていないのであれば、面倒かもしれませんが用意してみてはいかがでしょうか。
チャットのやり取り一回だけにかかる時間はしれているかもしれませんが、使用回数に応じて積み重なるので、総合的に見たらかなりの効率アップとなります。
たとえば、社内のチャットに関しては、文末に「よろしくお願い致します。」を入れないようにするなどです。
ただ、機械的なやり取りにしすぎることで、コミュニケーションが取りにくくなる点には注意しましょう。
当社でも文章のはじめに「お疲れ様です」の一文入れるのを禁止にしたこともあったのですが、スタッフから不評だったため戻したことがあります。
要件だけ送ってくることで、「相手が機嫌悪いんじゃないかと不安になる」との声が多数寄せられたからです。
ただし上記内容に関しては当社の中での話であって、他企業ではむしろ抜いたほうが良い結果につながったケースもあります。
会社の業務内容や働き方によっても正解は変わると思いますので、必要に応じて何度もルール変更してみてはいかがでしょうか。