営業部は企業のなかでも花形の部署といわれることがあります。
「事務職をするなら営業部で働いてみたい」「営業事務ってやりがいがありそう」と思い、興味を持っている人もいるのではないでしょうか。
一方で「営業事務は大変」という声を耳にすることもあり、不安を感じる部分もあるかもしれません。
そこで今回、営業事務をしたことがある男女180人にアンケートを実施。
「営業事務のきついところ」や「営業事務が向いている人」について聞きました。
- 調査対象:営業事務をしたことがある人
- 調査期間:2024年12月5日~19日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:180人(女性129人/男性51人)
- 回答者の年代:20代 16.1%/30代 42.3%/40代 23.3%/50代以上 18.3%
アンケート結果に対して、メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子(おおみか なおこ)氏より監修コメントいただいております。
メンタルケア・コンサルタント
大美賀直子(おおみか なおこ)氏
公認心理師、精神保健福祉士(以上、国家資格)、産業カウンセラーの資格を持ち、カウンセラー、研修講師として活動。
総合情報サイトAll About「ストレス」のガイドを務め、600本以上のコラムを執筆。「こころと人生と人間関係」のベストバランスを提案するコンサルティング、執筆、講演活動を行っている。
『大人になっても思春期な女子たち』(青春出版社)、『アメリカ式子育てマジックフレーズ』(KADOKAWA)、『長女はなぜ「母の呪文」を消せないのか』(さくら舎)など、著書・監修多数。
公式ホームページ:https://www.mentalcare555.com/
営業事務をきついと感じることがある人は77.8%
経験者180人に聞いたところ、営業事務をきついと感じることがある人は、「よくある(36.7%)」「たまにある(41.1%)」を合わせて8割近くにのぼりました。
ではどのような点を「きつい」と感じるのでしょうか。
具体的な回答を見ていきます。
営業事務のきついところ1位は「顧客のクレーム対応」
「営業事務のきついところ」を聞いたところ、もっとも多かった回答は「顧客のクレーム対応(15.0%)」、僅差の2位は「業務量が多く内容が多岐にわたる(12.8%)」でした。
3位「営業担当や顧客とのやり取り(10.0%)」、4位「緊急案件の多さ(8.9%)」、同率5位「営業担当との相性(6.7%)」、「板挟みのストレス(6.7%)」の結果となっています。
上位にランクインしたのは、大きく分けて「顧客や営業担当との関わり」と「業務量」についてとなっています。
1位 顧客のクレーム対応
- お客様からのクレームや納期遅延による問い合せが営業ではなく、会社でいつでも電話に出られる営業事務に向きがち(40代 女性)
- 電話での対応がメインなのでクレーム対応もあり、お客様からお叱りを受ける為精神的に辛いことがあります(30代 女性)
- 納期が間に合わずにお客様にお叱りを受けた時(40代 女性)
1位は「顧客のクレーム対応」でした。
営業担当者が外出している場合、電話がつながりやすい営業事務がクレームを受けるケースは少なくありません。
営業担当のミスや、営業担当から聞いていない件について責められたり問い詰められたりすることに理不尽さを感じている人もいました。
2位 業務量が多く内容が多岐にわたる
- 繁忙期の業務量の多さ。営業チームをサポートする役割が中心のため、繁忙期になると資料作成、データ入力、請求書処理、顧客対応など、同時並行で行う業務が増えることがあります(30代 女性)
- 日常の業務をこなしながら、並行して営業マンの補佐役もしなければならない(40代 女性)
- 営業マン6人に対してのフォローをしているため、同時に重要な仕事を任せられたり納期が重なるとかなり大変になる(30代 女性)
「業務量が多く内容が多岐にわたる」が2位でした。
営業事務の仕事は、資料作成やデータ入力といった日常業務に加え、営業担当が外出中の顧客対応や電話応対など、多岐にわたります。
さらに、営業担当からその都度仕事を依頼されることも多く、「やることが多すぎて忙しい」と感じている人が多くなりました。
とくに月末や年度末などの繁忙期には、仕事が一気に増えるためきついと回答した人が目立ちます。
また、営業事務が一人で複数の営業担当をサポートしている場合、同時進行で進めなければいけない仕事も多く、さらに負担が大きくなるようです。
3位 営業担当や顧客とのやり取り
- 自分の仕事がいつ終わるかは営業次第なので、お伺いをたてるのも人間関係をよく構築していないときついと感じると思います(20代 女性)
- 得意先の営業が自分を指定して連絡してくる(40代 女性)
- 対人関係のストレスだったり営業担当者や取引先とのコミュニケーションが多くて気疲れします(40代 男性)
3位は「営業担当や顧客とのやり取り」でした。
サポート業務が中心である営業事務は、営業担当と連携しながら仕事を進める必要があります。
そのため、普段から円滑にコミュニケーションが取れる関係を築いておくことが大切です。
また、営業事務が関わるのは社内の人ばかりではありません。
顧客からは「営業スタッフのアシスタント」という立場で見られることも多いため、営業スタッフと連絡がつかない場合には、営業事務が顧客から直接問い合わせを受けることも。
このように社内外のさまざまな人とコミュニケーションをとらなければならない点を「キツイ」と感じる人も多くなりました。
4位 緊急案件の多さ
- 「急ぎでこれをやって」と仕事を差し込まれることが多く、スケジュールが狂うことが多い(40代 女性)
- 営業が仕事とってきて、見積もり作成やその他雑務の期限が全て重なってしまい、お客様を待たせるわけにはいかないのでなんとしても期限までに全て終わらせないといけないとき(30代 女性)
- 営業さんは定時をあまり気にしないので、退勤前に仕事をお願いされることがある(30代 女性)
4位は「緊急案件の多さ」でした。
営業担当は、顧客から「明日までに見積もりを用意してほしい」「今すぐ◯◯を知りたい」といった急ぎの依頼を受けることが少なくありません。
その結果、営業担当から「支給対応してほしい」と営業事務に緊急の仕事が振られることも多くなります。
また、1日中外出していた営業担当が、帰社後に仕事を依頼してくるケースもあるため、「終業間際に急な仕事を頼まれるのがつらい」という声も多数寄せられました。
5位 営業担当との相性
- 営業と気が合わなかったら結構きつい(30代 女性)
- 営業さんが横柄で「これやっておいて」と指示だけして終わってしまうこと。アフタフォローがなく、わからないことがあっても聞けないこと(40代 女性)
- 営業担当にもよりますが、お願いする態度でない時はとてもやる気が下がりキツイです(30代 女性)
「相性の悪い営業担当にあたるとキツイ」という声も多く寄せられています。
職場にはいろいろな人がいるので、誰とでもうまくやれるという人は少ないかもしれません。
ただ、営業事務は営業スタッフのサポート業務をすることが多いため、営業スタッフと相性が良くないと仕事がやりにくくなります。
とくに「態度が横柄な営業スタッフ」に悩む声が目立ちました。
「最低限のコミュニケーションしか取りたくない」と思ってしまうような相手だと、報連相(報告・連絡・相談)が不十分になったり、意思の疎通がうまくとれなくなることも。
その結果、仕事のミスやトラブルにつながってしまう可能性があります。
同率5位 板挟みのストレス
- 間に挟まれる仕事なので、回答が返ってこなかったりすると、不安が増えきついと感じます(20代 女性)
- 営業がお客様から、納期がタイトな注文を受けてしまい、倉庫に頭を下げて出庫作業等の調整をしたことが何度もありました。そのような板挟みの状況になることがきつかったです(40代 女性)
- お客様と現場の間の板挟みになる事です。お客様より急な納期を言われる事が重なると、現場からクレームが来るのがしんどいです(30代 女性)
営業事務は「顧客と営業」「顧客と現場」などの板挟みになることがしばしばあります。
たとえば、顧客からの問い合わせ内容を営業スタッフに伝えた際に「その回答はちょっと待ってもらって」などと言われることがあります。
顧客からは「回答はまだなの?」と催促され、営業スタッフからは回答が得られない場合、顧客に対しては「もう少しお待ち下さい」としか伝えられません。
また口コミで多かったのが、顧客から「納品を早めてほしい」などと無理な要望を受け、現場からは「その納期では難しい」と返されるケースです。
自分の権限や能力でコントロールできない状況に対応しなければならない板挟みの立場に、ストレスを感じている人も多いようです。
営業事務が向いているのはコミュニケーション能力が高い人
経験者180人に営業事務はどんな人に向いていると思うかを聞いたところ、ダントツは「コミュニケーション能力が高い(40.0%)」で、全体の4割を占めました。
営業事務は、社内外の人と関わる仕事が多いため、コミュニケーション能力は必須と感じている人が多いようですね。
2位には「コツコツ取り組める(11.1%)」、3位には「臨機応変な対応ができる(10.6)」もランクインしています。
営業事務は業務量が多く、また仕事内容は多岐にわたるため、正確かつ柔軟にこなすことが重要と感じている人が多いと読み取れます。
1位 コミュニケーション能力が高い
- 営業の意図をきちんと読み取れる人(30代 女性)
- 大前提が他人と話をするのが好きな人、相手の話をきちんと聞ける人(40代 女性)
- コミュニケーションが好き、もしくは人が好きな人(40代 男性)
- お客さん、営業担当などとのコミュニケーションが要求されるので、それが苦にならない人(50代以上 女性)
1位は「コミュニケーション能力が高い」でした。
営業事務にとって、営業担当とのやり取りや顧客対応は避けられない仕事です。
コミュニケーションがうまく取れないと、認識のズレが生まれたり、連携が取れなかったり、必要な情報が届かなかったりして、仕事に支障が生じます。
そのため、「相手の意図を汲み取る」「自分の意図を正しく伝える」「疑問点や不明点を質問する」といったビジネスコミュニケーションにおける3つのスキルは、営業事務にとってとても重要となります。
また、「明るい人」「社交的な人」などが営業事務に向いていると回答した人も多数いました。
2位 コツコツ取り組める
- コツコツと仕事を進められる人(30代 女性)
- 忙しい時でも、仕事の優先順位を正確につけ、感情に任せず淡々と仕事こなすことができる人(30代 女性)
- コツコツとタスクをこなせる人(20代 女性)
2位は「コツコツ取り組める」でした。
営業事務は人とコミュニケーションを取る仕事がある一方で、事務作業も多く含まれます。
見積書の作成、データ処理、請求書の作成など営業をサポートする仕事から、伝票処理や領収書など経理関連の事務作業をするケースも。
月末や期末などの繁忙期には事務作業が増えるので、コツコツと地道に作業できる人が向いていると感じる人が多くなりました。
3位 臨機応変な対応ができる
- 急な挿し込みの作業が次から次に入ってくるから、臨機応変な対応が出来る人(50代以上 男性)
- 臨機応変に対応し自分で考えて行動ができる方。常に変化する状況や業務が楽しめる方(30代 女性)
- さまざまな場面に柔軟に対応できる方(30代 男性)
3位は「臨機応変な対応ができる」です。
仕事を進める際、「まずは◯◯をして、次に◯◯をして、◯時までに◯◯を終わらせる」などと、段取りを組んでいる方は多いのではないでしょうか。
しかし営業事務の仕事は、営業担当次第で急ぎの仕事が入ることが日常茶飯事。
その都度、優先順位を考えながら、臨機応変に対応していく能力が求められます。
また営業事務の業務は一般的な事務職と異なり、単なるルーティンワークだけではありません。
顧客や、工場など現場の都合により、予想していない問題が起こるケースも。
その場にあった適切な対応ができることは、営業事務にとって重要な資質と言えるでしょう。
4位 マルチタスクができる
- 顧客対応をしながら事務作業を進めるため、マルチタスクへの対応力がある人が向いている(30代 女性)
- いくつもの仕事を同時に出来る器用さがある人(50代以上 女性)
「マルチタスクができる」が4位でした。
営業事務の仕事内容は、書類作成やデータ処理などのパソコン作業から、電話応対、顧客対応まで多岐にわたります。
作業をしている最中に「営業担当から追加資料を依頼される」「顧客から急ぎの問い合わせがくる」といったこともあるでしょう。
忙しい時間帯や時期には、同時に複数のタスクをこなす必要があるため、マルチタスクができることも営業事務の必須スキルです。
5位 サポートが好き
- 誰かのことをサポートしたい!と強く感じている人(30代 女性)
- 人を支えることに喜びを感じられる人。(40代 男性)
- 人の為に何かをやってあげることに、喜びを感じるのが好きな方が向いていると思う(50代以上 女性)
5位にランクインしたのは「サポートが好き」でした。
「営業アシスタント」という職種名で募集されることもある営業事務は、営業担当をサポートする「縁の下の力持ち」的な仕事です。
営業担当がスムーズに営業活動できるよう、幅広い業務をこなします。
また細やかな気配りが必要な仕事でもあります。
「誰かの役に立ちたい」「人を支える仕事が好き」という人にとって、やりがいを感じられる仕事と言えるでしょう。
同率5位 メンタルが強い
- 理不尽な対応を受けても受け流す強いメンタルを持てる人(30代 女性)
- どんな言い方や対応をされてもスムーズに仕事をこなせる人(30代 女性)
- 何を言われても何も気にしない人や、人と話すことが楽しいと思える方は長く続いています(30代 女性)
同率5位は「メンタルが強い」でした。
営業事務は、ときには顧客からのクレーム対応を担当することがあります。
また忙しい時期などは、営業担当につらく当たられたり、理不尽なことを言われたりするケースも。
さらに営業事務は、複数のタスクを同時に進めたり急ぎの仕事を請け負ったりすることも多いため、納期や締め切りに終われることも少なくありません。
上記のような状況でも冷静に仕事をこなせるメンタルの強さが、営業事務には必要と感じている人もいました。
まとめ
営業事務は、高いコミュニケーション能力や事務処理能力、臨機応変な対応力などを必要とする営業部の要とも言える職種。
キツイことやプレッシャーを感じる場面も多いですが、そのぶんやりがいも非常に大きな仕事です。
営業事務は、顧客との連絡を円滑に行ったり、営業担当と現場の調整を行ったりすることで、営業活動を間接的に支えています。
営業担当が、自身の業務に専念できるのは、営業事務のサポートがあってこそです。
今回のアンケート結果を見て、「自分の性格に合っていそう」思った方は、ぜひ挑戦してみてください。
本調査のデータが示す通り、営業事務は、社内外の人々の多様な思いをくみ取りながら柔軟に対応しなければならず、さらに業務量も業務の種類も多いため、ストレスをおぼえやすい仕事と言えそうです。
だからこそ対人関係力とストレス耐性が養われ、ソーシャルスキルを高められる学びがいのある仕事であるとも言えるでしょう。
営業事務のプロになれば、ビジネスの能力を高められるだけでなく、人間性をも大きく成長させられることと思います。