今回、予期せぬ事態から、急にリモートワークになった人も多いことでしょう。
現在は通常出勤に戻った会社、しばらくはリモートワークが続く会社など状況はさまざまだと思いますが、
- 「ずっとリモートワークがいい…」
- 「やっと会社に行けてうれしい」
など、思いも人それぞれだと思います。
伊藤 陽介
今回は、リモートワークとオフィスワークの両方を経験した男女1,010人にアンケート調査を実施。
リモートワークをしたからこそ気づいた「オフィスワークのムダ」についてランキング形式でまとめました。
- 調査対象:リモートワークを経験した全国の男女
- 調査人数:1,010人(男性447人/女性557人/未回答6人)
- 調査期間:2020年7月15日~7月29日
- 調査方法:インターネットによる任意回答
リモートワークとオフィスワークどちらがいい?
リモートワークとオフィスワークの両方を経験した男女1,010人に「リモートワークとオフィスワークどちらがいいか」聞いてみました。
結果は、「リモートワーク(32.5%)」「どちらかというとリモートワーク(34.9%)」と回答した人が合わせて67.4%に。
両方経験した結果、7割近くの人が「リモートワークの方がいい」と思っているとわかりました。
- 満員電車に乗らなくてすむ(30代 女性 Webディレクター)
- スーツを着る必要がなく、気軽な服装で仕事ができる(20代 男性 システムエンジニア)
- 効率的に仕事ができた分だけ、自分の時間を作れた(20代 女性 事務職)
- 声をかけられたり電話がなることがないため、業務に集中できる(20代 女性 事務職)
電車にのらなくてよい、服装がラク、自分の時間を作りやすいなど、オフィスと比べて自由度が高く、ストレスなく働けることにメリットを感じている人が目立ちました。
また、電話応対や雑談、雑務がないため、自分の仕事に集中できて仕事がはかどるという意見も多かったです。
- オフィスはメンバーとすぐにコミュニケーションが取れて仕事がスムーズ(30代 女性 事務職)
- リモートワークは不便極まりない。会議は電波の状況が不安定、メールのやりとりは滞る、決済が遅いなど。全員にある程度の「リモートスキル」がないと仕事が進まない(30代 男性 事務職)
- 資料が会社にあるため、リモートだとできないことがありすぎる(30代 男性 事務職)
- 試作品やサンプルを見ながらディスカッションする際、リモートだとうまく伝わらず、業務の質が落ちる(20代 女性 研究職)
オフィスワーク派には、オフィスがよいというよりも「リモートだと不便が多い」と感じている人が多いのも特徴。
たとえば、「リモートだと同僚や上司に気軽に相談できない」「お客様相手の仕事はリモートでは限界がある」といった意見です。
また、自宅で仕事にならない理由として、「必要な機器や設備、資料がそろっていない」「個人のパソコンからは見られないデータがある」といった声も多くあがりました。
リモートワークで気づいたオフィスワークのムダに感じること
リモートワークとオフィスワークの両方を経験した男女1,010人に、「オフィスワークでムダだと思うことは何か」を聞いた結果となります。
回答数の多い順にランキング形式でご紹介。
ダントツの1位は「通勤時間(664人)」と、6割以上の人が回答しました。
次に多かったのは「会議・朝礼(456人)」で全体の4割強、次いで「雑談(89人)」「紙の資料(82人)」と続きます。
リモートワークを経験したことで浮き彫りになった「オフィスワークのムダ」について紹介していきます。
1位 通勤時間
- 通勤時間は本当に無駄。あの時間があれば残業しなくて済む(20代 男性 事務職)
- 自宅から会社まで通勤時間が片道1時間20分。リモートワークだとこの分長く寝られて身体もラク(40代 男性 エンジニア)
- 毎日往復3時間、なんて無駄な時間を過ごしているのだろうと思った。朝1時間も余裕があれば洗濯などができ、夕食も時間を使って用意できるので、コンビニやお惣菜に頼ることもなく経済的だった(20代 女性 事務職)
「嫌だな…」と思いながらも日常になっていた通勤時間。
しかしリモートワークを経験したことで、あらためて「通勤ってなんてムダな時間なんだろう」と痛感した人が多数いました。
通勤がないぶん、睡眠、趣味、家事、家族に時間を使えて生活が充実したという声も。
また、時間に余裕ができただけでなく、満員電車や渋滞のストレスからも開放されたため、リモート時は心穏やかに過ごせた人も多くいたようです。
2位 会議・朝礼
- 週一の朝礼や本社テレビ会議は、毎度内容も変わらないのでやる意味がない。(30代 男性 営業職)
- 定例会議はWebで十分。ただの数字発表会だった(30代 男性)
- 今回を機にすべてWeb会議になった。他支社の人がわざわざ本社に出張してまでする今までの会議は何だったのかと思う(30代 女性 事務職)
- 無駄に長い会議は省略しても成り立つことが証明された(30代 男性 営業職)
毎日の朝礼、報告や情報共有だけの定例会議、議題もなくだらだらと続く会議は「時間のムダ」という声が多数。
会議室の確保や出席者の日程調整、書類のコピーや配布など、準備にかかる時間がムダという意見も多く聞かれました。
また、会議室への移動や出席者を待つ時間が、本来すべき仕事の時間を削っているという意見も。
会議に参加するためだけに定期的な出張を行っている会社も多く、「交通費も移動時間もムダ。Web会議で十分」との声もありました。
3位 雑談
- 会議や打ち合わせ中のダラダラ話している時間。ある程度の脱線や雑談は気分転換になるが、その分仕事が遅れる(30代 女性)
- オフィスワークの良さとして「雑談しやすい」や「相談しやすい」などが挙がるが、相手の貴重な時間を奪っていることも認識すべき(40代 男性 エンジニア)
- 人の無駄話に付き合わせられる時間がムダ(50代 女性 事務職)
オフィスワークのムダとして、「雑談」が2位にランクインしました。
仕事中に話しかけられることで集中力が切れたり、時間が奪われたりすることにストレスを感じる人が多いようです。
ちょっとした会話から仕事のアイデアが生まれたり、気分転換になったりと、雑談は悪いことばかりではありません。
しかし、雑談に対する感じ方は人それぞれ。
話しかけるタイミングには注意した方がよさそうですね。
4位 紙の資料
- 紙の資料を印刷して配るのが無駄。リモートではPDFにして送信するだけなので、時間と紙が無駄にならない(20代 男性 エンジニア)
- 書類がなくても、メールやファイルのやり取りでどうにでもなると思った(40代 女性 旅行手配業)
紙ベースの報告書、稟議書(りんぎしょ)、申込書などの作成や、パソコンで見られる資料をわざわざ印刷することに対してムダと感じている人が多くいました。
とくに会議資料は、コストだけでなく、コピーやホチキス止め、配布などの準備時間もムダとの声も。
一方で、「パソコン画面より紙の方が見やすい」「オフィスにいると過去の資料がすぐに見られて便利」のように、紙の便利さを感じている人も少なくありません。
さらに言えば、リモートワークを不便に感じる理由として、「会社にある紙の資料が見られない」「自宅だとプリントアウトできない」などをあげる人も。
リモートワークの定着には、「デジタル化」や「ペーパーレス化」への慣れも重要であるとわかります。
5位 ランチの時間やお金
- 親しくもない人たちと休憩時間を合わせて食事をするのは、時間の無駄と改めて思った(30代 女性 WEBディレクター)
- ランチ時のお店の待ち時間(30代 女性 ECサイトの企画営業)
- ランチ代がムダ。同僚とのおつきあいも兼ねていたが、月あたりの費用が大きいことに気づかされた(30代 女性 事務職)
気の合わない人とランチする時間、お店を探す時間、行列に並ぶ時間がムダとの声が多く聞かれました。
また、毎日のランチ代もバカにならないとの声も。
リモートなら家にあるものをサッと食べられるため、お金も時間もかからないとの意見がありました。
6位 ハンコ文化
- 「なんでこんなものに上司の印鑑が必要なんだ」というものが多々ある(50代 男性 編集者)
- 議事録や起案書の印鑑を理事長から直属の上司まで、全員分もらわないといけない(30代 女性 事務職)
- 上司の不在や会議中で、急ぎの書類にハンコがもらえず困ったことが何度もあった(50代 男性 資材管理業務)
ハンコ文化は、リモートワークの定着を阻害する問題の一つです。
「上司の印鑑がないと仕事を進められない」という状況は多く、リモートワーク中、押印してもらうためだけにわざわざ出社した人も多いのではないでしょうか。
とても非効率ですよね。
リモートワークを定着させるには、ペーパーレス化と合わせ、印鑑にこだわらない承認方法に変える、電子印鑑や電子署名を導入するといった方向に進めていく必要がありそうです。
7位 飲み会
- 毎回断るのは申し訳ないので参加することも多かった飲み会。リモートワークになり行くことがなくなって、「仕事終わりってこんなに時間があったんだ」と気づいた(30代 女性 事務職)
- 飲み会も回数が多すぎると無駄と感じる(40代 男性 建設業)
飲み会がムダという声もありました。
強制参加や気の進まない飲み会、頻繁な飲み会にお金や時間を費やすことをムダと感じる人が多いようです。
ランチとは違って飲み会は時間も長いため、早く家に帰ってゆっくりしたい人や、やりたいことがある人にとっては苦痛な時間かもしれませんね。
8位 電話の取り次ぎ
- 電話取り次ぎなどの割り込み作業は、集中する時間が削られる(50代 男性 エンジニア)
- 内線は、直接個人の携帯に電話すればいい(30代 女性 事務職)
電話の取り次ぎをする時間がムダとの声もランクインしました。
たしかに「取り次ぎ」などというワンクッションを入れずに、最初から本人の携帯にかけた方が効率的ですよね。
最近は「知らない人と話すのが苦手」「相手の会社名や担当者名が覚えられない」といった理由から、電話応対を苦手と感じる人も少なくありません。
本人への直接の電話であれば、取り次ぎや伝言・メモを残すといった手間がかからないだけでなく、ムダなストレスも減りますね。
9位 オフィス
- おしゃれで大きなオフィスの維持費はムダ(40代 女性)
- リモートワークで人数調整をすればオフィスの規模縮小も可能。オフィスそのものの規模がムダ(40代 男性)
リモートワークで十分に機能する会社の場合、オフィス自体が不要、または広いスペースは必要ないという声もありました。
オフィスをなくしたり規模を縮小したりすることで、賃料をカットできますね。
また、完全ではなくともリモートワーク率を増やすことで、交通費の削減も可能になります。
10位 不必要な残業
- 上司が残っているから帰るに帰れない無駄な残業(50代 女性 ライター)
- 仕事が終わってるのに定時まで会社にいなくてはいけないこと(40代 男性 事務職)
- 残って仕事をしている人に気を使って残り続けること(30代 男性)
日本人は良くも悪くも人に合わせる習性があるため、「みんなが残業をしていると帰りにくい」と思う人が多いです。
近年は、残業NGの企業も増えましたが、依然として「上司より先には帰れない」といった古い慣習が残る会社もあります。
自分の仕事をきっちり終わらせているのに、上司や周りに合わせてムリに仕事を作ったり、時間をつぶして残業を装うことにムダさを感じているようです。
通勤時間はプライベートの時間でもなければ就業時間でもないので、ムダと感じる人が多いのでしょう。
支度の時間も含めると、一日のうちの数時間が通勤時間というのは確かに効率的な時間ではないのかもしれないですね。
2位以下の項目は、自分のペースで一人で集中して仕事をしたいという方の意見が反映されているかと思います。
通信、クラウド、セキュリティの環境が充実してきたことにより、 一人で仕事を進められることができるようになった時代の流れだと思います。
リモートワークを経験してわかったオフィスワークのメリット
次に、「リモートワークを経験したからこそ気づいたオフィスワークのメリットは何か」を聞いた結果となります。
回答数の多い順にランキング形式で紹介。
ダントツの1位は「コミュニケーションがスムーズにとれること(657人)」でした。
不明点をすぐに質問・相談してその場で解決できるため、「仕事がスムーズに進む」「スピード感をもって仕事に取り組める」といった声が多く聞かれました。
また面と向かって話すことで、言葉だけでなく、表情やしぐさからも細かなニュアンスが読み取れるため、
- 相手の思いを深く理解できる
- 相手の理解度がわかる
- 誤解が生じにくい
といったメリットも大きいようです。
そのほか、連携がスムーズに取れる、困ったときに察して助けたり助けてもらったりできるなど、同じ場にいるからこそのメリットを感じている人が多くいました。
何気ない雑談からアイデアや気づきが得られたり、聞こえてくる会話から情報を得られるという声もありました。
4位の「息抜き・気分転換になる」や5位の「連帯感が生まれる・励みになる」も直接コミュニケーションが取れるオフィスワークだからこそのメリットとなっています。
- 相談・報告が直接でき、すぐに適切なアドバイスがもらえる(40代 男性 営業職)
- 何気ない雑談での気づき。他人が話しているのを聞くだけで情報がアップデートされる(50代 男性 事務職)
- リモートは、伝えるための準備に時間と手間がかかる。オフィスなら共に作業を見ながら話せば5分で解決できる(30代 女性 デザイナー)
- 同僚たちとのおしゃべりにずいぶん助けられていた、ストレス解消になっていたとリモートワークをしてしみじみ感じる(60代 女性 事務職)
- 誰かがバリバリ働いているオフィスだとつられてやる気が出る(30代 女性 編集者)
2位の「オン・オフの切り替えができる」では、通勤があることで気持ちが仕事モードに切り替わる、自宅には誘惑が多く集中しにくいという声が聞かれました。
3位は「仕事の環境が整っている」でした。
パソコン機器やネットワークの充実度は、やはりオフィスが圧倒的です。
オフィスには、仕事に必要なものがすべてそろっているため、効率よく仕事ができるという声も多く聞かれました。
現物ありきの技術職、個人情報や機密情報の取り扱いがある仕事などは、リモートワークでは不便が多いようです。
- 通勤時に気持ちのオンオフの切り替えができる。場所を変えることで「今から仕事をする」と気持ちが切り替わる(30代 女性 事務職)
- オフィスの方が緊張感があり、仕事がはかどる(40代 女性 秘書)
- ネットワークの安定性、セキュリティの安全性など、普段は意識しないが、会社がきちんと整備してくれていることを感じた(40代 女性 経理)
- 自宅でそれなりの仕事環境を作るには、スペースや金銭的な問題もある。快適な環境で仕事ができるのはオフィスワークの良さだと感じた(50代 女性 事務職)
オフィスワークを好む人は、人とのかかわりを好む傾向がありますね。
人とかかわりながら仕事を進めていくことにやりがいを感じ、 逆にプライベートは自分の時間を大切にするというメリハリをはっきりされる人が多いのではないでしょうか。
まとめ
リモートワーク派でも、オフィスワーク派でも、「どちらかが100%よい」と思っている人はそれほど多くありません。
双方のよい面をうまく取り入れること、また、これまで意味もなく続けてきた悪習を思い切って捨てることが、これからの働き方を考えるうえで重要なのかもしれません。
リモートワーク賛成派とオフィスワーク賛成派に共通して言えることは、仕事を効率的にするためにはどちらが良いかを考えて回答している点です。
業種、仕事内容は様々なので、どちらが効率的かを検証して取り組めれば良いかと思います。
コロナ禍でリモートワークが進んだことは、多様な働き方ができることを知る良いきっかけだったと思います。
どちらかではなく、状況に応じて使い分けるのがよいのではないでしょうか。
その際に大切なことは、自分だけの効率化を考えるのではなく、会社全体の最適化を図るためにどうすればよいかを考えることです。
長期間リモートワークを続けると、また回答が変わってくるかもしれないですね。
菅原由一(すがわらゆういち)氏
■SMGグループ
・SMG菅原経営株式会社
・SMG税理士事務所
・SMG社会保険労務士法人
CEO、税理士、資金繰りコンサルタント
ブログ「菅原の黒字経営の極意!」。
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これまで500本以上のセミナー講師を務める。
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「メットライフ生命」「タナベ経営」「船井総合研究所」「アチーブメント」
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