【理系におすすめの職業ランキング】理系出身者243人アンケート調査

理系での学びは、「数字・データ」「実験」「自然現象の理解」などを通じて、物事を筋道立てて考える力や課題解決力を養います。

上記の力は専門分野に限らずさまざまな場面に応用できる力となり、理系出身者ならではの視点や強みとして、キャリア形成や業務の土台になります。

今回は243人の理系出身者にアンケートを実施し、「理系におすすめの職業」をランキング形式でまとめました。

【調査概要】

  • 調査対象:理系出身者
  • 調査期間:2025年8月21日~9月4日
  • 調査機関:自社調査
  • 調査方法:インターネットによる任意回答
  • 有効回答数:243人(男性136人/女性107人)
  • 回答者の年代:20代 25.5%/30代 27.6%/40代 25.5%/50代 15.2%/60代6.2%以上

調査結果に対して、株式会社RMロンドンパートナーズ代表の増沢隆太氏よりご考察いただいております。

増沢 隆太
■監修者プロフィール
増沢隆太氏

株式会社RMロンドンパートナーズ代表
東北大学特任教授、人事コンサルタント、産業カウンセラー。
欧系、米系の外資一般企業や人材企業を経て独立、現職。
理系就活の第一人者としてマイナビ、日経スタイル他でキャリア情報を発信。
Yahooニュース公式コメンテーター。

理系におすすめの職業1位は「ITエンジニア」

理系におすすめの職業

理系出身者243人に「理系におすすめの職業」を聞いたところ、圧倒的1位は「ITエンジニア(39.9%)」でした。

2位「エンジニア(17.7%)」、3位「研究職(15.2%)」と続きます。

上位にランクインしたのは、いずれも高度な専門知識を求められる職種です。

結果からは、理系出身者が専門性の活きる仕事を志向していることが伺えます。

また、研究職・医療職・建築設計などは、大学や高専・専門学校などで学んだ知識を存分に生かせる職種でもあります。

つまり理系出身者が、学んだ知識を直接的に活用できる職種に魅力を感じていることもわかりました。

1位 ITエンジニア

  • 「アルゴリズム」「データ解析」「暗号」などは数学的な理解が欠かせないため。また理系は現象を数式やモデルで表すことが多く、システム設計やデータ構造の理解に強い(20代 女性)
  • 理系で培った論理的思考や問題解決力を活かせるからです。技術の進歩が早く、常に学び続けられる環境があり、最新のIT技術に触れられる点も理系に向いています(30代 女性)
  • 一人で黙々と作業する時間と周囲とコミュニケーションする時間のバランスが、理系学生と似ていると思う。論理的に組み立てて考えた発想を、仕事に活かすチャンスが多い(50代 男性)

1位は「ITエンジニア」でした。

文系出身のITエンジニアも活躍していますが、理系の学部学科には情報工学などITエンジニアとしての仕事に直結する分野があります。

またシステム設計などに欠かせないとされる「論理的思考」「問題解決能力」「数学的な素養」も、理系分野の学びで身につきます。

「理系の学びのスタイルと、ITエンジニアの働き方のスタイルが似ている」という意見も。

さらに、最新分野を学び続けたいという探求心旺盛な理系出身者の場合は、職種としての特徴と、本人の性格との相性もいいとわかりました。

2位 エンジニア

  • 理系で学ぶ内容に関わる業種のため(30代 女性)
  • 製造業の技術者(工場系等)。専門学科で学ぶ人が少ないため、競合が少ない。その職業に就けば、最低限生きていける(30代 男性)
  • エンジニアがいいと思います。とくに電気回路や構造の設計をおすすめします。電気回路は2進数や16進数で考えられるので、備わっていると助かります。構造や機械設計も数学・物理の思考を活かせる点がおすすめです(40代 男性)

2位は「エンジニア」でした。

機械工学や電気電子工学といった分野と直結する職業が、機械系や電気系のエンジニアです。

専攻してきた分野を実務に応用でき、採用選考でも業務に関わる専攻分野を学んできた理系出身者は有利になりやすい傾向があります。

またジャンルによってはライバルが比較的少なく、安定して活躍できる環境となるのも魅力です。

3位 研究職

  • 大学で学んだ分野を活かせる(30代 女性)
  • 大学教授。自分の好きな研究に、生涯を捧げられるから(40代 男性)
  • 実験や計算など、理系の知識を使うから(50代 女性)

3位は「研究職」でした。

研究職も、大学や大学院で培った知識や探究心を直接活かせる職種です。

大学で研究を続けるのはもちろん、企業や研究所の研究職として活躍する道もあります。

研究者は、興味のあることや疑問に思っていることをとことん突き詰められる点が魅力。

現在は博士号が必須とする募集がほとんどですが、研究したいことがあって大学院まで進んだ人には、チャレンジする価値のある職業だと言えます。

4位 医療職

  • 臨床検査技師。「生物学」「化学」「医学」などの知識を活用できるから(20代 女性)
  • 医療関係。コメディカルの専門職。専門職で資格があるので強い。病院や企業にも職があり、幅広く活躍できる(30代 女性)
  • 看護師。手に職をつけられる職業で、全国どこでも就職が可能だから。また幅広い分野で活躍できるから。訪問看護ステーションを開業してもいいし、美容クリニックで美を極めてもいい(30代 女性)

「医療職」が4位です。

看護師や薬剤師など、医師・歯科医師以外の医療職(コメディカル)を挙げた人も多くなりました。

コメディカルとして働くには国家資格が必要になるのが一般的で、「国家資格があれば、全国どこででも、長く働ける」という考えがあるからです。

「キャリアを安定させるのも、ライフステージに合わせて柔軟に働くのも、やりやすい」という意見がありました。

医学科・歯学科は設置している大学数が限られていて狭き門ですが、看護師や理学療法士などを目指せる学校は、比較的多くなっています。

5位 建築設計

  • ものの組み立てなどの図形や、物質量の計算など、理系の考えを用いることが多いから(20代 女性)
  • 基本的に学べる学科が少なく、社会人になってから勉強するのは困難で、競争があまりなく安定的に仕事ができる(30代 男性)
  • 綿密な計算と予測するスキルをふんだんに活用できる(40代 男性)

「建築設計」が5位に入りました。

理系学部の中には、建築や土木に関する学科があります。

建築士は1級・2級ともに難関資格であり、資格があると重宝されて、安定して働けるのが魅力です。

また建築士の資格をもたずに建築設計業務にたずさわる仕事として「設計士」があり、理系で培ったスキルを活かせます。

理系の学びで仕事に役立つスキルは「論理的思考」

理系の学びで仕事に役立つスキル

「理系の学びで仕事に役立つスキルは何か?」という問いに対して最も多かった回答は、「論理的思考(31.7%)」、僅差の2位は「データ分析能力(30.5%)」でした。

以下、3位「専門知識(16.9%)」、4位「計算力(8.6%)」、5位「数学的思考(7.8%)」の結果です。

「論理的思考」「データ分析」「数学的思考」が上位に入っており、数字や事実をもとに筋道を立てて考え、結論を導く力が評価されているとわかります。

また「専門知識」という回答もあり、理系で学んできた内容を、直接的に活かしている人も多いことが読み取れます。

1位 論理的思考

  • 筋道を立てて考える論理的な思考(20代 女性)
  • 採用データや市場の動向を論理的に分析し、採用戦略を立てる際にも、理系で学んだ思考法が役立っています(30代 男性)
  • 論理的思考力です。物事を雰囲気・常識にとらわれず考えるよう鍛えられることは、強みになると思います。(60代以上 男性)

1位は「論理的思考」でした。

理系の学びでは、自然現象や実験結果について「◯◯が理由で◯◯という結果になった」など、因果関係で説明することが求められます。

そのため誰もが納得できるように、筋道を立てて考える習慣が身につきます。

仮説を立て、実験・観察や調査で仮説を検証し、結論を導くというスタイルは、社会に出てからも活かせる普遍的な思考法だとわかりました。

雰囲気や常識といったあいまいな要素に流されず、論理的に考えるという姿勢も、仕事するうえで生きていることがわかります。

「論理的思考に基づいて説明することで、周囲を説得しやすい」という声もありました。

2位 データ分析能力

  • データから考察する能力(20代 女性)
  • 数字に強く分析が好きなので、自分の強み弱みを客観視しやすい(30代 男性)
  • データの扱い方や分析スキルが、役に立っています(50代 男性)

2位は「データ分析能力」でした。

理系における学びでは、実験データや調査データを扱うことも少なくありません。

結果を数字で示し、傾向を読み取ることが求められるので、「データを扱う感覚」「分析するときのコツやテクニック」が磨かれます。

「論理的思考を重視するので、データを読み解く力は仕事でとても重宝している」というコメントもあったように、正確なデータ分析は論理的思考をサポートする要素です。

3位 専門知識

  • 製図の知識(20代 男性)
  • 生物学に関する知識は、仕事に直結して役立っています(30代 男性)
  • 解剖生理学。人の身体を看るうえで「なぜこの症状が起こっているのか?」を把握する基礎になるから(30代 女性)

3位は「専門知識」でした。

特定の職業や業務に直結する学部学科で学び、予定通りの職種に就いた場合には、学んだ専門知識を生かしやすくなります。

例えば「看護学科を卒業して看護師になる」「建築学科を卒業して建築士になる」といったケースがあります。

学生時代に専門的な知識を得ておくことで、スムーズに実務を開始できたり、職場の研修や仕事内容を理解しやすくなったりするのですね。

4位 計算力

  • 暗算の速さは負けないと思います(20代 女性)
  • 数字による計算で、きちんと状況の把握ができること(40代 男性)
  • 「概略の数値で暗算する」というテクニック(60代以上 男性)

「計算力」が4位です。

理系での学びでは数字を扱うことも多く、日常的に計算と向き合います。

複雑な計算が可能な「関数電卓」なども、理系出身だと使ったことのある人も多いのではないでしょうか。

そのため専門分野に応じた公式の知識や計算のテクニックが身につきますし、暗算に自信があるという人も多くなりました。

計算力があることで、状況把握がやりやすくなるといったメリットがあるとわかります。

5位 数学的思考

  • 数学的思考力はとても大事だと思うし、今でも使える(50代 男性)
  • 理系で培った数学的思考力は、仕事で効率的に解決策を導く際に、大いに役立っていると思う(60代以上 男性)

「数学的思考」が5位に入りました。

数学的思考とは、「複雑な事象を数式やモデルに落とし込み、再現性の高い解決策を導くための考え」です。

数学の素養があると、例えば「最適な配送ルートを考えるときに、数学的なモデルが使えないかな」「利益率と売上やコストの関係を、数式でわかりやすく整理しよう」といった思考が可能になるのですね。

ビジネスシーンでの問題を解決するために、数学的思考が役立っているとわかりました。

理系の専門知識を仕事で使っている人は81.1%

理系の専門知識を仕事で使っている人の割合

「理系の専門知識を仕事で使っているか」を聞いたところ、「使っている」と回答した人が「頻繁に(36.2%)」「時々(44.9%)」を合わせて81.1%にのぼりました。

多くの人が、理系の学びで得た知識を仕事で活用しているとわかりました。

すべての理系出身者が専攻に関係した職種に就くとは限らないため、知識そのものを直接使う場面もあれば、論理的思考やデータ分析といった形で応用されるケースもあると考えられます。

論理的思考や、数字やデータに基づいて判断する姿勢などは、幅広い職種に役立つ汎用性をもつことから、活用できる範囲が広いと推測できます。

まとめ

アンケートの結果、理系出身者におすすめの職業としてトップに挙がったのは「ITエンジニア」でした。

他にも「エンジニア」「研究職」「医療職」「建築設計」と、専門性や論理的思考力を活かせる職種が多くなっています。

大学や専門学校で得た専門性が、直接的に生きる職種も多かったのが特徴です。

特定の職業を目指して進学し、専門知識を得て希望職種に就けたら、効率的かつ幸せなことですね。

ただ専門分野に直接は関係ない職種を選んだとしても、論理的思考やデータ分析能力など、理系の学びで培われるスキル・能力は、大いに役立つことがわかりました。

「学校では情報系を専攻したけど、ITエンジニアはちょっと違うかも」などと感じた場合には、専攻のイメージで職業選択の幅を狭める必要はないこともわかります。

調査結果に対して監修者の増沢隆太氏から総括コメント

最後に当記事の監修者、株式会社RMロンドンパートナーズ代表の増沢隆太氏の総括コメントを紹介します。

増沢 隆太
増沢隆太氏の総括コメント

大学の理系学生進路指導やヘッドハンター時代の理系人との交流を通じて感じたのは、理系人の強みが何といってもその「専門性」にあることです。

知識は常に陳腐化します。

しかし理系専門知識を土台と位置付け、それを実務によってアップデートできていれば、会社から見れば限りなく魅力的な人材と映るでしょう。

この両者の足し算で人材バリューは極大化します。

どちらかが少ない場合は、片方で補正できるくらいに能力を上げ、さらにはそれが第三者から見ても納得できるレベルなら、目指す職への道は近付くと思います。