伊藤 陽介
憧れていたわけでも狙っていたわけでもなかったのですが、在宅と喫茶店で仕事を続ける、いわゆるノマド的な仕事を2011年11月から10年以上続けてきました。
その生活を10年以上続けることになった理由から感想までを以下にまとめてみました。
はじめて記事を書いた時点では2013年でしたが、10年以上経ったため、2022年に加筆修正しました。当時の拙い文章も多々混じっていますが、コラム調記事のためそのままにしてあります。
会社の急激な経営悪化で社内クラウド化に取り組む
三重県で事務所を構えて小さい会社を経営していたが急激な会社の経営悪化に伴い、社内クラウド化を本格的に導入しはじめたのが、2011年からです。
社内クラウド化が予想以上に上手くいき、10人近くいたパート、アルバイトを全員、在宅ワークに切り替えて事務所を縮小。
それまでの主な仕事はWEB制作、コンサルティング等、営業社員も数名抱えて、バリバリやっていましたが、コンサルティングなどを断っていき、売上を立てていない営業社員は解雇。
現在の主な仕事は求人サイトやメディア運営、特に仲の良いお客さんのみに絞ったコンサルティングやWEB集客のお手伝いとなります。
クラウド化導入後3ヶ月時点で自分が会社にいなくても仕事がまわる環境は出来ていましたが、事務所には毎日出勤していました。
東京に行くか?それとも大阪?
2011年11月、東京に行くか大阪に行くかの選択に迫られることになりました。
ビジネス仲間から「ついに東京進出か?」と驚かれたりしたのですが全然違います。
ウチは共働きで嫁さんも働いているのですが、もともとの職場が大阪で結婚前までは三重県の自分と遠距離恋愛だったんですね。
結婚してから一緒に三重に住むようになっていたのですが、大阪までの通勤が遠すぎるのと、10年以上に渡って大阪という都会に身を置いていたことで、三重のあまりの田舎っぷりが苦痛というのも合わさって嫁さんのストレスは相当たまっていました。
嫁さんは自分に気を遣わせないようにと、あまり愚痴はこぼさなかったのですが、さすがに一緒に住んでいたら疲れ果てているのがすごくよくわかります。。。
そこで「いまは自分がいなくても会社がまわるから大阪に行くか?」と提案したところ、それだったら実は前から東京のある会社から転職の誘いを受けているから東京に行きたいとなりました。
そんなことから「じゃあ、オレも着いていくわ」ということで東京に移り住むことになりました。
まぁ、ヒモみたいなモンですね。といっても自分もきちんと働いていますが(笑)
自宅 or 喫茶店が仕事場に
東京で三重とは別に事務所を借りて、人を雇う気は無かったので自然と仕事場は自宅か近くにあるベローチェという喫茶店。
仕事自体、三重の事務所と在宅ワーカーのスタッフだけでも十分にまわっていたというのもあります。
以上のような理由から別にノマドワーカーに憧れていたわけじゃ無いけど、自然とノマドワーカーなスタイルになりました。
東京に引っ越したのは、2011年の11月のことでしたが、私自身はこのときノマドワークという言葉自体を知りませんでしたし、興味もありませんでした(笑)
ノマドワークをしてみて良い思ったこと
2013年時点では、ハッキリ言ってひとつもありませんでした。
こんなことを言うと、ノマド生活に憧れたり、いま楽しんでいる人は怒るかもしれませんが、当時の自分には全く合いませんでした。
正確に言うと、当時自分のやっている仕事がノマドワークというスタイルと合わなかったカタチです。
しかし、2022年1月現在は、喫茶店やホテルなどでもノマドワークを楽しくこなせています。
なぜなら、ライティングや編集作業、資料作成の仕事も増えたためですね。
ノマドワークで不便に感じたことは、モニター画面が小さいこと
Googleドライブやドロップボックス、エバーノートなどクラウド上で同期すればどこでも同じ情報を得られて、同じレベルの仕事ができると言われています。
たしかにデータやリアルタイムでの情報という面では全く問題ありません。スタッフともスカイプを使うことでリアルタイムにやりとりが可能です。
しかし、ノマドワーク時のノートパソコンのモニターが小さいこと不便でした。
私は家や三重の職場では24インチのモニターを二つ並べてデュアルディスプレイで仕事をしていました。
デュアルに一度でもしたことがある方ならわかると思いますが、モニター画面の小さなノートパソコンと比べると、作業効率が全く違います。
持ち歩きできるモニターも購入して試してみましたが、喫茶店に置いてあるテーブルのスペースでは正直難しかったです。
いくら居心地の良い素敵な喫茶店やホテルのロビーだったとしても、作業効率が落ちることのストレスのほうがはるかに上まわります。
喫茶店なら考え事や書き物の仕事がはかどるからおすすめ?
喫茶店だと考え事が捗るといった意見も少なくありません。
たしかに思考型の作業に関してだと、喫茶店はとても捗ります。
しかし、2013年当時の私の仕事はコンサルティングでもなければライターでもありませんでした。
何か作業をしたいとなったときにはとても非効率でイライラしましたね。
個人差はあるでしょうが、ライターさんでも調べものが多い場合は、デュアルモニターの片方の画面でHPを見たり調べたりしながらやったほうが効率良い考えています。
外でも何回か通って慣れると家と変わらない
三重県にいたときはずっと事務所で仕事をしていたので、初めて喫茶店で仕事をしたときはそれはもうモチベーション上がりまくりで、すごい集中力で仕事をすることができました。
しかし外でも何回か通って慣れてくると家と変わらなくなる日が来ます。
・・・離れの部屋みたいな感覚です。
大体、私はベローチェという喫茶店に行き、いつもアメリカンをブラックで注文するのですが、「ミルクとシロップはおひとつずつでよろしかったでしょうか?」と毎回聞かれることにげんなりします。
「じゃあ、ベローチェばかり行ってないで他にも行けよ!」と思った方もいるでしょうが、いろいろと場所を変えたとしてもパソコンが変わるわけではないので一緒ですし、行動範囲はそれなりに絞られてくるので飽きるのは同じです。
ランチや晩ごはんを食べる際、近場の飲食店をローテーションでまわって最終的には「全部飽きた」と、嘆くのと同じ感覚です。
行動範囲を広げたらと思うかもしれませんが、たまにならまだしも日々の仕事をするためにわざわざ毎日遠出する気にはなりません。
あと、誤解の無いように言っておきますと、ベローチェは決して悪くありません。
むしろ逆です。スタバとかファミレスとかホテルとか色々と行きましたが、個人的に一番居心地いいからこそ、リピートしているわけですからね。
在宅ワークでずっと自宅に居ると、仕事のオンオフの切り替えが難しい
ここまでの内容を見てきて「それならずっと家のパソコンでやれよ」と思った方もいるかもしれません。
結論から言うと、ずっと在宅ワークだけでも精神的にきついです。
在宅ワークでずっと自宅にいると、仕事のオンオフの切り替えが難しいからですね。
仕事のスタートは毎日、スカイプでスタッフ全員でミーティングしてからはじめるので良いのですが、問題は終わるタイミングです。
家で仕事をしていると夜遅くまで仕事を平気でやっちゃいます。
じゃあ、仕事の量もすごいのか?というとそうでもありません。
誰の目にも触れていないこともあり、ダラダラとやってしまうんです。結局は納期ギリギリになって焦って仕事をすることもチラホラ。
誰にも見られていないことで、やっぱりどこか気が抜ける部分があり仕事のスピードも質も落ちていきます。
三重県の事務所で仕事をしていたときは、周りの目もあるので気を張って仕事をすることができました。
家に帰ってくると一気に気が抜けてヘトヘトになるのですが、仕事のオンオフの切り替えがそれだけ出来ていたということです。
2013年当時は、在宅ワークを継続的に行うことに慣れていないこともあって、常に気が張っているのか、常にゆるんでいるのかが自分でもわかりません。
仕事に対して、ずっと中途半端な気持ちが続いていて辛かったです。
在宅ワークの話をすると、周りからは「自由で気軽な生活しているね」といわれるのですが、事務所で仕事しているときよりもはるかに疲れていました。
同じように悩んでいる人は私だけではありません。
2020年6月に当社が行った「リモートワークで困っていることランキング!男女961人アンケート調査」の結果の中でも「オン・オフの切り替えが難しい」は6位にランクインしています。
しかし、上記の内容は、在宅ワークをはじめたばかりの2013年時点での話です。
2022年現在は、10年にわたってさまざまな工夫と環境改善をしてきた甲斐もあって、上手くコントロールできるようにはなってきています。
たとえば次のような工夫ですね。
- 自身の考えをまとめたり書き出す仕事はノマドワーク
- ビジネスチャットのチェックや返信はジムでエアロバイクを漕ぎながらスマホで行う
- Zoomでスタッフと画面共有することで自分を監視してもらいながら作業する
- 寝室にはスマホやパソコンを持ち込まず、完全に仕事オフの空間にする
- ポモドーロテクニック(※)やクロームの拡張機能の導入
- スマホをの観ない時間、観ない時間を切り分けている
※ポモドーロテクニックとは
ポモドーロ・テクニック(英: Pomodoro Technique、ポモドーロ法)とは、時間管理術のひとつ。 1980年代にイタリア人のフランチェスコ・シリロによって考案された。このテクニックではタイマーを使用し、一般的には25分の作業と短い休息で作業時間と休息時間を分割する。 1セットを「ポモドーロ」と呼ぶ。これは、イタリア語で「トマト」を意味する言葉で、シリロが大学生時代にトマト型のキッチンタイマーを使用していたことにちなむ。
※参照元:ポモドーロ・テクニック – Wikipedia
在宅ワーク・ノマドワーク関係なく孤独なのは辛かった
在宅ワーク・ノマドワーク関係なく、昼間はずっと一人で仕事をしているのが孤独で辛かったです。
昼間、誰とも直接会わない時間が長いとこんなにも孤独感でるのか?というのは自分でも驚きました。
Web会議やビジネスチャットを使ってのやり取り自体は多くても、孤独感は消えません。
夜は嫁さんがいるし、東京にも10年以上住んでいると友人も出来たので、飲みに行ったりしまくっているのですが、昼間、誰とも会わないというのは予想以上に苦痛でした。
ただ、上記はあくまで私個人の主観的な意見であって、個人差もあるでしょう。
取引先との打ち合わせが多い仕事のノマドの人であればまた違うかもしれませんけどね・・・。
結果的に自分は週二回、加圧トレーニングにちょっと早めの時間から行くようになりました。よく頑張りますね!と言われますが、この生活スタイルじゃなければ週に一回行くかどうかだったと思います。
身体つきがよくなってきたことだけはちょっと嬉しいです(笑)
在宅ワーク、ノマドワークの適正チェック
以下、在宅ワークやノマドに向いている人かどうかを判断するための適正項目をいくつかまとめてみました。
人間関係が無くてずっと一人でも全然大丈夫
人間関係が無くてずっと一人でも全然大丈夫な人は向いているでしょう。
私も一人でいるのが好きなタイプだったので平気だと思っていましたが、全然ダメだということに気がつきました。
いつもノートパソコンで仕事をしている人は場所が変わってもストレスを感じにくい
いつもノートパソコンでしか仕事をしていない人は場所が変わってもストレス感じにくいでしょう。
20インチ以上の大きなモニター画面やデュアルモニターに慣れている人は小さなノートパソコンだけの仕事はかなりイラつくはずです。
喫茶店の居心地がよくてもパソコン環境が悪いことにストレスを感じ始めます。
誰にも観られていなくても仕事へ集中できる意思が強い人
誰にも観られていない環境で集中力を持って働くには、自分の強い意思が必要です。
叱ってくれる上司、切磋琢磨するライバル、憧れのリーダーなど誰ひとり居ない中、自分ひとりで黙々と積み重ねないといけないわけです。
自宅で一人でトレーニングして、食事制限をしてダイエットを成功させるのと同じぐらい強い意志が必要です。ひとつひとつのやることは簡単だけど自分ひとりで続けるのはとても難しいことです。
仕事のオンオフの切り替えが上手な人
仕事のオンオフの切り替えが上手な人、もしくは切り替えられる環境を作ることは大切です。
上でも書きましたが、いつでもどこでも仕事が出来るということはいつでもどこでも仕事のことばかり考えてしまいます。
やるときはやる、やらないときはやらないというのをしっかりと割り切れないと、ずっと疲れます。
いまの時代、スマホなどでもメールチェックが可能なので余計にいつでも仕事のことを考えてしまうことでしょう。
仕事環境を工夫して作る人
在宅ワークやノマドワークのスタイルに絶対的な正解はありません。
企業に務めるビジネスパーソンであれば、社内で決められたルールに合わせていけばOKです。
しかし、特に決められていなかったり、フリーランスの場合は、自分で仕事環境を工夫して作っていく必要が出てきます。
一緒に住んでいる家族の理解がある
一緒に住んでいる家族の理解は必要です。
たとえばWEB会議の際などは、別の部屋に移動してもらったり、静かにしてもらう必要などがでてきます。
また、田舎のほうだと昼間っから家の近くをフラフラしているだけで「ちゃんと働いているの?」とか噂になることも少なくありません。
実際、東京のほうですら同じ階に住んでいる人同士が私のうわさをしていたこともあります。
そういった陰口に自分は平気でも家族が嫌がったりすることもあるので、注意が必要です。それだけのために在宅ワークをやめて事務所を借りている友人もいます。
10年以上経った現在の仕事と生活のスタイル
いろいろと試行錯誤してきた結果、現在はひと月の約半分は東京、ひと月の約半分は三重県の事務所で仕事をしています。
あとは名古屋、大阪の出張など地方にいることもあります。セミノマドといったカタチでしょうか。
そんな言葉ないと思いますが笑って許してください。
「三重県に戻ったりする交通費もバカにならないのでは?」
たしかに東京から三重の往復の交通費だけで2万円以上かかるのですが、自分は月イチで名古屋と大阪での仕事もあるのでそこにあわせて三重に戻るカタチをとっているので大丈夫です。
大阪と名古屋の用事もある程度、融通が利くので名古屋に行って、三重に戻って一週間以上、事務所にこもって仕事をした後、大阪に行って東京に戻ってくるカタチです。
三重の事務所は当然ですが、東京の家と同じパソコン環境が用意してあるのでストレスもありませんしね。
以前までは嫁さんを一人でほったらかしで一週間の出張とか悪いかなと遠慮していて、名古屋、大阪の出張があっても3日や4日で東京に戻るようにしていました。
しかし、この生活と仕事のスタイルがあまりにも辛いと正直に話したところ、嫁さんもいまの生活を理解してくれています。
いまは月の半分ぐらいしか嫁さんと会っていないのですが、ずっと一緒に居るよりも、逆に以前よりも些細なケンカも減り、仲良くなった気がします(笑)
いつも会っていると会話も減ってくるのですが、会っていない期間が長いとその間の出来事などをお互い楽しく話し合うのとかすごく楽しいです。
さて、思った以上に長文となってしまいましたが、自分の在宅ワークとノマド生活のお話は以上となります。
いま、在宅ワークやノマドワークをお考えの方にとってこの記事が少しでも参考になれば幸いです。